前略、食堂の机上より 

「……でね、絶対に運命ってあると思うのよ」
「フォークを人に向けるな。……で、その運命とやらは、俺の貴重な朝食時間を
 割いてでも拝聴しなきゃならないような重要な話なのか?」
「だって、ご飯は一人で食べるより二人で食べるほうが美味しいじゃない」
「食べるだけで、余計な話を長々と聞かされるんじゃなければな。
 ……それにしても、何でそんなに食べるのが遅いんだ?」
「私はファインと違ってゆっくり味わう派なの。……だって、毎日見るのよ、夢を。
 これって運命以外の何物でもないと思うわ」
「……食事の夢を?それはまあ、確かに何かしらの運命が働いてそうだが」
「ちーがーう〜!ブライト様の、夢を、毎日、見るの!やっぱり運命のなせる業よね。
 同じひとつ屋根の下にいるっていうロマンチックな環境がそうさせるのかしら」
「ふしぎ星にいるときは?」
「……毎日見てたわよ」
「……ただの習慣なんじゃないのか?」
「た、たとえ習慣になってるんだとしても、よ。毎晩毎晩見るなんて、ただの偶然じゃ
 あり得ないでしょう?」
「ひとつ、考えられる仮説があるな」
「……どんな?」
「ブライトへの妄想が進化し過ぎて、毎夜夢に見るほどの呪いレベルにまで発展した」
「……………………」
「わかった、俺が悪かった。それは認める。だから頼むから、その手に持った
 ソースと醤油と塩と砂糖を俺のコーヒーに向けるのはやめてくれ」
「…………シェイドは、運命を信じてないの?」
「信じる信じない以前に、現実に起きた出来事に非科学的な後付けをするのが好きじゃない」
「それは信じてないっていうのよ。……なんで?恋人に限った話じゃなくても、
 この世に生きてる人がみんな何かの運命で結ばれてるって考えたら、素敵じゃない」
「…………」
「例えばよ。おひさまの恵みが消えてしまうかもしれないっていうことにならなかったら、
 私とシェイドだってこんなふうに一緒にご飯を食べたりできるような仲に
 ならなかったかもしれないわ。シェイドは私の中でずっとプリンスシェイドのままで、
 近寄り難い遠い存在の王子様のままだったかもしれない」
「……今は、どうなんだ?」
「今?今は、シェイドが無愛想で乱暴でがさつで口が悪くてクールどころか冷淡で
 あまのじゃくだって知ってるわよ」
「……それはどうも」
「でも、本当は責任感が強くて優しくて、頼りになるってこともちゃんとわかってるもの」
「………………」
「照れてる?」
「うるさい」
「ふふ。だからね、いろいろな偶然が重なった結果として、今の私とシェイドがあるわけだから。
 もし、そんなふうに運命を動かしてる神様とかがいるんだとしたら、
 こんな素敵な偶然をありがとう、って感謝したいの」
「……言いたいことは分かるけどな」
「やっぱり、信じられない?」



「……今、こうやって二人で喋ってることも何もかも、誰かに決められてたなんて
 癪に障るだろ。朝っぱらから益体も無い運命論を聞かされてるのも、
 合い席相手の亀の歩みといい勝負の食事速度に付き合ってやってるのも、
 誰かに強制されてやってる訳じゃない。少なくとも、俺は俺の意思でこうしてる」


「…………シェイドって、意外にロマンチストなのね」
「何でそうなる」
「へえ……そうなんだ。ふうん、そぉお……」
「…………」




不本意ながら、本日のところは彼の負け。




対ブライト攻略法を練るレインとそれに無理やり付き合わされてるシェイド、という
マブダチっぽい構図も好きです。


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送