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「穴を穿つ」(ちゃお版 エクレイ)
なんかちょっとおかしな方向にいってるブラファ
一緒に住んでるブラファ
「放課後保健室」(二期 エクレイ)















「穴を穿つ」


ピアスって、痛いの?
青い髪の少女は彼の耳元をじっと見つめて、そんなことを云った。
「忘れた。開けたのなんか、ずいぶん昔だ」
「ふうん?」
そっけない物言いにも頓着した様子を見せず、翠の眼はひたすらに彼の耳朶を眺めている。
光り物が好きなこの少女の事だから、彼の耳に連なる石に興味でも持っているのかと思ったら。
「触ってもいい?」
どうやら、彼女の興味は穴を穿つことそのものに向いているらしい。
他人に身体を触らせる趣味は無いが、とりわけ気の強いこの少女が自分から
彼に触れたがるなどというのはそうそうあることではないので、彼の口角は微かに上がる。
「ほら」
少女の指が迷わないように、耳元を覆う髪を払ってやる。爪先に掠ったクロスが揺れて、
ちりりと音を立てた。
細い指先が彼の耳を杭打つ石をなぞり上げるその感触には多少の遠慮が含まれていたように思うが、
ピアスと彼の身体の境界線を探り当てようとするような指の動きは、逆に彼の悪戯心を刺激する。
「ピアスの穴が性感帯だって云う俗説、知ってるか?」
ぴたりと指の動きが止まって、ひと呼吸置いた後に甲高い叫び。
「し、ししし信じらんない!今度そーいうこと言ったら私の半径十メートル以内に近付くの禁止するわよ!?」
と、十センチと離れていない距離でまくし立てる。
「お前は開けないほうがいい」
「なんでよ!」
「ピアスが邪魔で、耳にキスしにくくなる」
蒼糸のひと房を掬い上げ、白い耳朶を舐めてやった。

今度こそ平手で張り飛ばされたが、青い髪の少女の顔は愉快なくらいに真っ赤だったので、
彼の機嫌は下がろうはずもないのだ。

ちゃお版でエクリプスとレイン。       







1+1は2、1×1はイコール1。そんな当たり前の計算式を解くように、その子は云った。
「ブライトって、もしかしてお菓子でできてるの?」
ファインがそのとき見つめて唸っていたものは算数の宿題であって家庭科でも生物でも保健体育でも
なくて、だから今いきなりそんな疑問がどこから湧いたんだろうか、とそっちの方が不思議だった。
疑問の中身については――まあ、ふたご姫だから言うに及ばず。
「どうして?ああ、えっと……もしかしなくても、お菓子で出来てはいないんだけど」
「あ、やっぱり。あたしもお菓子でできてるわけないとは思ってたんだけどさ、ん、一応」
なんだー、やっぱりそうか。
ぐりぐり動かされるペンの下には、さっきまでファインが悪戦苦闘していた計算式――の、
ようなもの――があったはずだ。それは明日提出の宿題じゃなかったんだろうか。
「お腹が空いたなら、休憩しようか?」
まさか宿題のせいでファインの頭とお腹が限界まで切羽詰ったために浮かんだ幻だとか、とは
さすがに言えない。
「んー、まだいいよ。もっかい最初からやってみる」
部分的に黒く染まったページから真っ白なページにペンを移し、ファインはまた真剣な顔をする。
いつもの笑ってる顔も好きだけど、こういう顔も好きだな、と頭が勝手に馬鹿なことを考えた。
「あのね、だって。なんかブライトのこと見てると……うーんと、なんか胸がほんわかして嬉しくなるから」
これって、おいしそーなお菓子見てるときと一緒だもん。

ばさりと僕の手元から落ちた本が足の甲を直撃したけれど、ファインは問1に真摯に向き合っているらしく
返って来たのは、どうかしたー?という返事だけ。
何でもないよ、と答えて本を拾って、机の影でこっそりと頬をつねる。痛い。ついでに、心臓の煩さに
比例するように熱い。ということは、これは今この瞬間、現実に起きている出来事なわけで。
冗談みたいな夢よりも突拍子もない、唐突で止まることのない現実なのだ。この子と、僕の。

「食べてみたら、甘いかなあ」
「それは……どうだろう、ね」

だけど、彼女が一口齧らせて、と言ったとしても僕はあっさりと腕の一本程度は
差し出してしまいそうで、そんな自分の馬鹿さ加減がほんの少しだけ怖い。




最初の予定ではファインがかぷっと噛み付くところまで書いてました。       







髪と同じ色をした眉が曲線を描いている。いつもは大きく開いて、さも幸せそうに僕の作った料理を
平らげてくれたり、僕にいろいろなことを語って教えてくれる口も、今はへの字。
むう、とか、ううう、とか、母音が「U」のうめきが何度も漏れる。
「大丈夫?」
僕の質問には答えずに、ファインはフォークを皿の上に突き刺した。
三叉に分かれた先端が皿に盛られたそれを削り取り、黄色の山の一部分は彼女の口の中へ
消えた――と思ったら、
「……あう」
赤い髪の女の子は身体をぶるりと震わせて、がっくりと肩を落とした。

「あたし、オムレツは甘いのが好きなの」
それは知ってる。だから僕はいつも、卵料理を作る時にはうんと甘くする。
「だから、砂糖をたくさん入れたんだよ。……そしたら、なんかお菓子みたいな、変な味になっちゃって。
甘くしすぎちゃったんだから、今度は塩を入れたんだけど」
その結果、想像を絶する味になったらしい。

「無理しない方がいいよ。塩も砂糖も、いっぱい入れたんだろう?……あまり、身体にいいような
匙加減には見えないし」
キッチンのシンクに残された洗い物の中にあったのは、牛乳や料理用のワインを鍋に入れる時に
使うような、大きな匙だった。あれで砂糖や塩を加減していたのだとしたら、何となく、目の前にある
オムレツの味も想像できる。
「それは、だめ」
顔を上げて――その顔はまだしかめっ面のままだったけれど、僕の目をまっすぐに見据えて、彼女は云う。

「卵、四個も使っちゃったんだから。四個だよ、四個。オムレツって、卵がいっぱいいるんだ」
指がずずいと四本、僕の前に突き出された。キッチンテーブルの上に置き去りにされていた
料理の本には確かに「材料、卵四個」と書かれていた気がするけど、
それは二人分の量であって――と、口を開きかけて、僕は少しばかり自分を恥じた。
僕の帰る時間に合わせて二人分のオムレツを作る理由なんて、そんなもの、分かり切ったことじゃないか。
玄関のドアをくぐるのと同時に鳴いた鳩時計の音は、九回だった。
ファインが目の前のオムレツにそうしたように、前髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる僕には構わず、
ソプラノボイスがとうとうと続く。

「卵を四個も産むのって、きっと大変だよ。鶏にしてみたら卵って、子供と同じでしょ?
あたしはまだ経験とかないから、わかんない、けど」
それはそうだろう。もし、彼女が僕のあずかり知らないところで四人も子供を産んでいたりしたら、
僕はその場で卒倒する自信がある。

「材料だって、空からぽっと落ちてくるわけじゃないんだもん。だから、あたしが明日も明後日も
きもちよくごはんを食べるためには、ちょっとぐらい失敗しても、このオムレツだって食べなきゃ
だめなんだと思う」


さて、その言葉を聞いて僕が最初に取った行動と云えば、愛用のフォークを取りにキッチンへ
向かうことだった。
「美味いものは一人で食え、不味いものは皆で食え」という外国の古いことわざを耳にした時、
僕は笑ったものだ。
だって僕は、美味しいものはファインとその嬉しさを共有しながら楽しみたいし、
たとえ不味いものであっても、ファインの可愛らしい文句を聞きながら一緒に皿をつつき合うこと、
それ自体は決して楽しくないものではないと信じている。
ファインの方でも、ほんの少しでもそう思っていてくれたらいいのだけれど。

僕が出かけていた間にファインが綺麗に洗っておいてくれたフォークを手に取り戻って来ると、
ちょうど三口目――四口目かもしれない――を口に放り込んだ僕の可愛い彼女が、林檎色の頭を
テーブルに突っ伏したところだった。


同棲か新婚さんかは不明ですが、とりあえず一緒に住んでるらしいブラファ。らぶらぶ。      





「放課後保健室


放課後の保健室の扉の隙間から、見慣れた青い頭を見つけた。
それだけなら、まあ、あれだけ足元が覚束ないのだから怪我のひとつやふたつするだろう、とたいして
気になる風景でもなかったけれど、その青い頭はふらふら――ゆらゆら、だろうか?
とにかく不安定にあちらこちらへ揺れていて、シェイドの眉が軽く寄る。
「なにやってるんだ、お前」
「ひゃう!?」
こつん、と一度、ノック代わりに戸を叩いてやったが、何やら片足でバランスを取っていた青い髪の
ふたごの姉の耳にはそんなものはさっぱり届いていない様子で、目に見えて分かるほどに
縮み上がったあと、両の手を精一杯に振り回し――田畑にいる案山子が動き出したらきっと
こんな感じだ――、結果的には数秒のあいだ、無駄な努力をしたという結論だけを彼の脳裏に残し、
予想通りにすてんと転ぶ。
「……どうしていつもいつも、こーいう時に限ってシェイドに見られるのよぅ……」
「あぁ?」
「せくはら。女の子が体重計ってるの黙って見てるなんて、プリンスのすることじゃないわ」
「体重……ああ。それ、体重計か」
そこで初めて、レインが景気良くすっ転んだまま、座布団代わりになっている物体の正体に気が付いた。
想像するに、さっきの片足立ちは彼女の出来得る限りの悪あがきだったのだろう。
くだんの表示部分は都合よく、広がったスカートに隠れて見えない。別に興味があるわけでもないが。
シェイドの視線が下方に下ったのを察知したらしい少女は、とても言葉では表現し切れないような
叫びを上げてスカートの裾をぐいぐいと伸ばし、必死に己の自重が知れるのを隠そうとしているようだった。
次いで、真っ赤な顔で睨まれる。なんとなく、外聞の悪い光景のような気がひしひしとしたので、
シェイドは後ろ手で扉を閉めた。

「なんで、女はそういうのが好きなんだ?」
「なによ、そういうのって」
「そういうの、だよ。自分が重いとか軽いとか、不必要に気にする」
誰に迷惑がかかる訳でもないだろうに、と溜息混じりに言ってやると、途端にレインの眦が上がった。
「…………お」
「お?」
「おもい、って、言ったじゃない……!ボンボン祭りのとき!」

今度は、こっちが驚く番だった。レインの発言の内容にも、跳ね上がった声色にも。

「ファインにも、アルテッサにも、ミルロにも、シャシャにもリオーネにも言わなかったのに、
……わ、わたしには、重いって」
「……まさか、聞いて回ったのか?」
「……う」


「…………っ、く、」

「あああ!いま!い、今、笑ったでしょう!?」
「っは、はは、……おま、お前…………ほ、ほんと、に……くく」
「な、な、な……ばか!ばか、へんたい、いじわる!知らない、もう……!」


頬を朱に染めたレインが渾身の平手を彼の胸に残して立ち去った後も、その数分後に金の髪の友人が
通りかかって、気は確かかい、と真顔で問いかけてきたときも、シェイドは腹の底からの可笑しさと、
少しばかりの愉悦から来る笑いを堪えることが出来なかった。



シェイドが楽しそうなシーンを初めて書いた気がします。いつも疲弊させて申し訳ない。      







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